華氏911、Micheal Moore

華氏911は、しばらく前に見ましたよ、ロンドンで。最近日本で公開になったらしく、いろいろな評判を聞くようになり、また、どう思うと人から聞かれることがしばしばですので、ここで一言。

よくできたドキュメンタリー映画だと思いますよ、まず第一に。映画意図していることは明快で、その意図したところをこの映画は、この映画がドキュメンタリー映画であるという制約内において、見事に果たしています。まあ、僕はもともとブッシュにはやめてもらいたいと持っていた人ですので、余りよいサンプルではありませんが、そうでなくとも、ブッシュがアメリカ下層民衆の利益に反する政策を多く思考していること、自分の周りの人間は大儲けしていること等、やっぱりブッシュはよくないよ、と言うのが説得力を持って伝えられていると思います。

よくあるこの映画に対する批判、特にインテリ層からのに、すでによく知られている事実ばかりであるというのがあります。が、一般に知られている、ある意味において一般的にすでに事実であると認証されている事実をつなぎ合わせて、これだけインパクトのある映画を作る事ができたと言うことに、大いに感心するべきだ私はと思います。事実というのは点で、いくつかの点と点をつなぎ合わせる事で話の筋というのは成立します。ドキュメンタリー映画として、事実として描かれたイベントが参照可能な事実でなければならないのはもちろんですが、映画としての説得力は事実と事実をいかにつなぐか、いかに点と点の間を埋めていくのかにかかっています。

また、よくある批判にこの映画はプロパガンダである、だから、よくない、と言うのがあります。確かにこの映画のメッセージはハッキリとしており、この映画が観客に要求していることもハッキリしています。それをもってプロパガンダであるというのであれば、この映画は確かにプロパガンダであります。しかし、それ故にこの映画がよろしくない、あるいは低級であるという理屈は、成り立たないでしょう。通常言われるプロパガンダの問題点というのは、力を持って意見を一法的に押しつけ、人を洗脳しようとすることにあります。また、我々の時代、近代後期においてのプロパガンダというのは、娯楽という形式をとり民衆にものを考えさせないという機能を果たす、ということがフランクフルトスクール以降の研究によって言われています。

以上の意味合いにおいて、華氏911は、プロパガンダでは、ありません。何故なら、この映画は、観客に考えることを要求しているからです。



ほかにもいろいろありますが今日はここまで。